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ユウゲンマガンたんかあいいよぉぁああ!!!!




 
 ― あらすじ ―







 ユウゲンマガンが大流行しました。







 〜 はじまり 〜




幻想郷にもムーブメントと言う物がある。
それはサッカーだったり、ゲーム機を蹴り合う遊びだったり、足しか使ってねえじゃねえか。
何より今でも続いている有名な流行と言えば勿論『弾幕ごっこ』だろう。

今より紡がれる歴史は、その流行の波に紛れ込んだ一つの『異変』の物語である……










「ユウゲンマガンたんカワユス」







慧音は言った。

教室に入ってきて早々いきなり何を言い出すかと思えば、それは異国の言葉だった。
混乱する生徒達を会話的な安置に置いてけぼりにし、慧音はおもむろに緑のチョークを手に取ると、黒板に何かを書き殴る。






   幽幻魔眼の充血したお目めに穴堀りしたい







「で、どうだろう。 当て嵌まる漢字が載っていなかったので当て字をしてみたんだが」





嗚呼、先生もお疲れなんだ……
しょうがないさ、あのお方は里を守る賢者様、我々にはその御心を知る由はない……

生徒達は労いの視線を我らが敬愛すべき半獣に向けると、優しく授業の続きを促した。



「とりあえず先生はユウゲンマガンたんを探しに行ってくる。
 今日は自習な。 帰っても良いぞ」



生徒達は髪を金色に染め眉を剃り落とした。




――




「……で、何がどうなってんの?」

「おや魔理沙。 イイダローコレ、イイダローコレ、イイダローコレコレー」

「確かに幻想入りしてそうねそれ」


久々に人里に訪れた魔梨沙が町中を歩いていると、いつかの歴史食いが自分に向かって妙な外国人の物真似を始める。
適当にあしらいながら、彼女の後ろに見える元・我が家の喧噪の原因を尋ねてみた。


「で、どうしてこんな騒ぎになってるの?」

「迷わず行けよ。 行けば分かるさ」

「分かったわ。 ちゃんと真ん中歩いて行くわね」


魔梨沙が懐かしの元・我が家を遠目に見てみると、そこには無数の人集りが出来ていた。
おかしいわ、とうとう閉店セールでも始めたのかしら? と思い、もう少し近寄ってみる事にした。




「きゃーやったー! 買えちゃったー!」
「うわ押すな馬鹿野郎!!」
「テメエこそ何処に目ぇ付けてやがる!」
「やったぞ!リグルきゅんのお尻触った!触ったよぉー!」
「きゃー!?」 ピチューン!!
「最後の一個ー!!」
「畜生……ちくしょおおおおおおおおお!!!!」




なんとお店は普通に繁盛しているようで、人妖交えて押すな押すなの大混乱。
どの位大混乱かと言うと、足の生えた妖怪大根がランするくらいの大混乱。

結局店主である霧雨の親父が「ユウゲンマガンたんグッズ本日完売でーす!」と夏や冬に元気な人達みたいに叫ぶと、
それを皮切りに買えた人、買えなかった人、何者かに蹴られ意識不明の重体一名、そして目の前で売り切れたドンマイさんと悲喜交々な様相を呈しながら、皆帰路に着く。



「……なにこれ」

「おや、あんた霧雨の。 なあ嬢ちゃん、ユウゲンマガンたんマグカップ欲しいんだけど何とか手に入んないかなー? 頼むよー」

「……なにそれ」

「へ!? あんたら幻想郷の住民なのに、あのMr.Terch……じゃなかった、ユウゲンマガンたんを知らないのか? それともネタ?」

「あんたらって私は一人よ。頭がおめでたいわね」

「彼のこと勉強してから出直して来い! と言いたいが、流石に新参乙、じゃ可哀想だからな。
 教えてやろうじゃないか。 ユウゲンマガンたんって言うのはな……?」

「あ、良いわ。 あの馬鹿から直接聞くから」



そう言い残し、魔梨沙は霧雨道具店へと入っていく。
暫しの沈黙の後、赤い服へと着替えた何か鉄臭い魔梨沙が清々しい顔をして店から出てきた。



「……慧音の所行かなきゃ」

「おや嬢ちゃん、きりさめじいさん倒した後にちびまりさんの術でも使ったかい?」

「4×4=16べぇー」



魔梨沙は向かう。 一路寺子屋へ。
この異変を巻き起こした、全ての元凶の元へ。





――



「おや魔理沙、どうしたんだ?」

「いえね、なんだか異変が起こってるから、ズバッと解決しにきたの」

「異変だと? 何処で起こってるんだ?」

「アンタの頭の中」

「……ああ、いいだろ? ユウゲンマガンたんグッズ」

「私と会話してよ」



慧音の私室に溢れていた物は、キモ可愛く、いやキモキモくデフォルメされた充血目玉の数々だった。

彼女が手に持つユウゲンマガンたんカップに夢に出そうなユウゲンマガンたんTシャツ。
ユウゲン(略)たん写真集にユウ(略)たんうちわ、ユ(略)たん灰皿もこたん印の竹細工。

なんか一個だけ彼女のジャスティスを感じた魔梨沙はそれを見なかった事にし、彼女のスカートを捲ってみる。


「あら懐かしい」

「崩してもいいのよ」

「アンタ頭湧いてんじゃないの?」


何か丁度良い位置に穴の空いたy(略)たんキャップを頭に被った慧音のスカートの中は、そりゃあもう見事な(略)たんパンティーだ。
彼女の腰回りに敷き詰められたブロックは、触ればちゃんと崩れるようになっている。 なんと芸の細かい事か。
いっそここまで清々しいとイカロが手招きを始めている。



「くぱぁ」

「やん♪」

「自重しなさいよ」

「何もやってないくせに」

「つんつん」

「らめえ」



慧音は興奮していた。

一枚、また一枚とブロックが崩れ、露になっていく肌色の羞恥に、もはや慧音は抗おうとは微塵も思わない。
ただ執拗に責め立てる魔梨沙の人差し指に身を任せるのみだった……



「はい終わり」

「おや? もう?」

「マエリベリー」

「はぁん♪」



最後に一枚だけ崩してみた。 これ以上はほんと勘弁して下さい。
とりあえず魔梨沙も七色さん程ではないが手先は器用な方である。
見事なまでのマエリベリーだけを残した慧音を後ろ手に縛り上げると、今回の異変の原因を聞く事にした。



「で、なんでこんなんなってるのかしら?」

「いや、ユウゲンマガンたんが……」

「それはもういいから」

「うぐぅ……実はな……?」



事情を聞いて驚いた。
なんとこの馬鹿、ユウゲンマガンが可愛いからと満月の夜に無理矢理ユウゲンマガン萌えの歴史を作り出したらしい。
それならば村人達の熱狂振りも納得がいく。 いくか馬鹿。

とりあえず慧音の頭を冷やす為に妹紅を呼び出し、魔梨沙はこの事件のもう一人の首謀者の元へと向かう事にした。




――



「霖之助さ〜ん」

「おや、霊夢か。 いらっしゃ……い?」


















目が。














二億四千万の瞳が霖之助をギョロッと見下ろしていた。

堪らずに、先程声をかけてきた巫女と思しき人物の姿を探し回る。



「霊夢、霊夢! これはどういうことなんだい?」

「はろ〜、香霖」

「おや、魔理沙だったのか。 声真似上手いね」

「そろそろ気付いて貰いたいんだけどね」

「何言ってんだい?」

「いや、こっちの話。 で、これなんなの?」



これなんなの、と言われても。
霖之助は返答に困る。 ただ単に霧雨の親父さんから話を持ちかけられ、面白そうだから乗っただけだからだ。
それがなんでこうなるんだろう? 思い悩むも、答えは出ない。

よし、分からなかったら人に聞く!



「これがどうかしたのかい?」

「なんでこんなんなったの?」

「いや、里からとある半獣が……」

「それは聞いた」

「じゃあどうして?」

「慧音とウチの馬鹿がおかしくなったから、異変解決して回ってるの」



霖之助は悟った。
ヤバい。 今の魔理沙はなんかヤバい。 特に口調がヤバい。
懐かしい口調に思わず誰てめえ、と叫びたい。 だけど叫んだら最後、こんてぃにゅーはできなさそうだ。
だから霖之助はこう言った。




「……ああ、君もユウゲンマガンたんグッズ欲しいのかい?」




馬鹿野郎。

空気読めと。 何故今このタイミングでその話になる。
お前の目の前に積まれた今にもロリコン共に説教しそうな目玉の山はなんなんだと。
私が洗脳された村人達の目を醒まさせてきたんだと。

ほら見てみろお前。 これなんか手足生やしちゃって、もうちょっとで確実に訴えられるぞ。
ゲゲゲ様ナメんなこの野郎。



「とりあえずなんか色々と不味いから回収してきたのよ」

「色々って?」

「幻想郷の神主様とか、あと色々。
 だからアンタ降板されたのよきっと」

「あれは出版社側の都合だって」

「BLは文化の極みよね」

「もう一度慧音の所に行っておいで」

「はぁ〜い……あ、その前に」

「?」




――



「魅魔様に買っちゃった♪ うふ、うふ、うふふふふふふふ♪」



夕日に紅く照らされた魔梨沙は霖之助の言葉を無視し博麗神社へと飛んでいた。
その手にユウゲンマガンたん着ぐるみを大事そうに持って。



「はろ〜」

「あら魔梨沙。 お茶でも飲んでく?」

「アンタは気付いてくれたのね」

「なんのこと?」

「こっちのこと。 はいコレ」

「なにコレ?」

「魅魔様にお土産よ〜♪」

「魅魔? そういや最近見ないわね」

「もうっ、靈夢のイケズぅ」

「清水のおかっぱ少女みたいなこと言わないの。
 で、これがどうしたの?」



魔梨沙は此処に至るまでの経緯を事細かに説明した。
最終的な売り上げまで、本当に包み隠さず。




















――後日靈夢はユウゲンマガンを探しに行った。

  後の新作である。


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